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最高裁判所第三小法廷 昭和24年(れ)2819号 判決 1951年5月15日

主文

原判決中被告人山本太一に関する部分を破棄する。

被告人山本太一を懲役二年及び罰金八〇万円に処する。

被告人山本太一が右罰金を完納することができないときは、金二千円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。

原審における訴訟費用中証人森康吉同渡辺清八に支給した分は被告人山本太一の負担とする。

被告人奥元敏治の本件上告を棄却する。

理由

被告人山本太一の弁護人中村登音夫上告趣意第一点及第二点について。

被告人山本に関する原判決の判示第二の事実はその挙示の証拠により十分これを認めることができる。第一審第一回公判調書によれば同被告人は本件取引は同被告人個人のもので所論会社の取引ではないと明らかに供述しているのであり又、原審第一回調書によれば相被告人奥元敏治は、裁判長の「被告人としては山本個人か又は山本の会社から買入れるのか何方の心算だったのか」との問に対し、「私は山本さん方に参って御話を致しましたが此の話は主として山本太一さんとその弟さんとに致して居りましたので私としては山本太一さん個人の方が感じが強く大体に於て私は山本さん個人の心算でした」と供述しているのである、してみれば原判決が右被告人山本の第一審第一回公判調書の供述記載及び相被告人奥元敏治の原審公判廷の右供述その他を綜合して前示判示事実を認定したことは相当であり、何等経験則に反したかどもなく又虚無の証拠で事実を認定したという違法もない。その他何等所論のような違反はないから論旨は理由がない。

同第三点について。

原審第四回公判調書の一部、記録第六九七丁乃至第六九九丁の間に契印丁数の記載の各脱落等の存することは所論のとおりであるがその筆跡、墨色等に徴し同一書記の真正に作成したものであること疑を容れる余地のないものであるし、右第六九八丁の一葉が所論の如く裁判長の右調書に対する署名捺印後に濫りに入れ換えられたものと認むべき形跡も存しないので右契印並びに丁数の記載がないからといって直ちに右調書は無効であるということはできない。論旨は理由がない。

同第四点について。

原審第四回公判調書の公判手続更新に関する記載が精密を欠くうらみのあることは所論のとおりであるが、右調書の所論記載によっても裁判長が旧刑訴法第一三三条、第三四五条第一項、第一三四条、第三四五条第二項の夫々規定する手続を履践公判手続を更新した事実を表示したものと解することができるから、原審公判手続には所論のような違法はない。論旨は理由がない。

同第五点について。

原判決は、所論被告人山本太一作成の小麦粉短麺販売一覧表の記載を第一審第一回公判調書中の同被告人の判示第二と同旨の供述記載と綜合して原判決判示第二の事実認定の証拠としたものであることは、原判決自体に徴し明らかである。しかして第一審第一回公判調書によれば同被告人は、判事から右一覧表を示された上、其の表の記載のとおり小麦粉短麺等を販売したことは相違ないと供述している。そして本件記録によれば右販売一覧表には同被告人が昭和二二年二月中旬頃から同年九月中旬頃迄の間五回に亘り奥元敏治に売渡した原判示第二の事実に符合する小麦粉短麺等の取引をその販売日時、販売品目数量、販売価格を一々明細に表示した記載が存するのである。してみれば原判決は、所論販売一覧表と相俟って、明らかにされた第一審第一回公判調書中に存する同被告人の判示第二と同旨の供述記載により、判示第二の事実を認定した趣旨であることは明らかであるから、原判決には証拠の如何なる部分により如何なる事実を認定したかを明らかにしない違法があるということはできない。論旨は理由がない。

同第六点について。

所論小麦粉に対する昭和二一年一一月二〇日物価庁告示第一八五号、並昭和二二年七月六日物価庁告示第三五八号にる統制額及び短麺に対する昭和二一年三月二二日大蔵省告示第一三二号並に昭和二二年七月六日物価庁告示第三五九号による統制額は何れも、容器を含まない裸売の価格であることは所論のとおりであるとしても被告人は小麦粉については、一袋(正味二二瓩入)につき一〇〇〇円乃至二五〇〇円で販売し、短麺については、一袋(正味一八瓩入)九〇〇円乃至一八〇〇円で販売しているのに右各告示によれば小麦粉の統制額は夫々一袋(正味二二瓩入)につき、七九円七〇銭又は、二〇八円三〇銭であり短麺の販売業者の統制額は夫々一瓩当り二円三五銭(即一八瓩につき四二円三〇銭)又は一〇〇匁(三七五瓦)につき四円七五銭(即一八瓩につき二二八円)であるから、被告人の販売した価格は、著しく統制額を超過しているわけである。しかるに容器代の如きは右超過額に比すれば極めて僅少な価格と認められるから、仮りに、原判決が被告人の販売した価額から容器代を控除しなかったからといって、その違法は原判決に影響を及ぼさないこと明白である。

次に所論昭和二一年三月二二日大蔵省告示第一三二号によれば短麺について、製造業者販売価格の統制額、中央食糧営団販売価格の統制額及び販売業者(中央食糧営団を除く)販売価格の統制額を指定していることは所論のとおりである。しかし、右告示にいわゆる中央食糧営団を除く販売業者販売価格の統制額というのは、一応は現実に法規に従って正当に短麺の販売業を営む者の販売する場合の統制額を意味するのであるが、価格の統制は正常に営業を営む業者の取引を対象とするだけではなく、その他の取引にも及ぶものと解すべきであるから、その物品の販売を営業とする者でなくても、たまたまその物資を度重ねて販売し又は多量に販売したような場合には、その取引については右告示の販売業者販売価格の統制額を適用してその行為を取締るべきである(昭和二四年(れ)第一七八一号、同二六年一月三〇日第三小法廷判決参照)。されば原判決がこの見地に立って、被告人の数回に亘る判示の如き大量取引の事実を認定した上、これに右所論販売業者販売価格の統制額を適用処断したのは、正当であって、所論のような違法はない。論旨はすべて理由がない。

同第七点について。

物価統制令第三条に違反し統制額を超えて、物資を販売した犯罪事実を判示するには、その販売した目的物に統制額が存しその統制額を超えて販売した事実を示せば足りるものである。原判決が小麦粉、短麺を「物価庁指定の公定価格より…超過して販売し」と判示したのは、右小麦粉、短麺を、これについて夫々定められている統制額を超過して販売した事実を判示した趣旨であって、小麦粉に対する統制額は物価庁告示により、短麺に対する統制額は大蔵省告示及物価庁告示により夫々指定されていることは所論のとおりであるけれども、犯罪事実の判示としては一々その統制額が如何なる官庁により指定されているかを示す必要はないのである。そして原判決は法令の適用の部において、被告人の右判示行為中小麦粉売渡の点については、物価庁告示を短麺売渡の点については大蔵省告示並に物価庁告示を、夫々誤なく適用しているのであるから被告人の判示行為当時、小麦粉、短麺に夫々統制額の存したことも自ら明らかである。してみれば犯罪事実の摘示の部においては単に「物価庁指定の公定価格を超過し」と判示しながら、法令の適用の部に物価庁告示の外大蔵省告示を適用しているからといって判決の理由に齟齬又は不備があるとはいえない。論旨は理由がない。

同第八点について。

原判決中被告人山本の販売行為の回数と、同被告人からこれを買受けたという被告人奥元敏治の買受行為の回数とが、その認定を異にしていることは所論のとおりであるが、原判決の事実摘示と挙示の各証拠就中被告人山本太一作成の販売一覧表並に被告人奥元敏治作成の買入明細表並に小麦粉短麺販売一覧表とを対比して検討すれば、右は被告人山本が被告人奥元に対し、一回に売渡したものを被告人奥元については、これを同被告人が朝日新聞社の業務として買入れたものと同社の業務とは無関係に、自己のために買入れたものとに分ちそれぞれ業務としての買入行為の回数と業務に無関係の買入行為の回数とを計算したことによるものであることがわかる。そして、被告人山本が被告人奥元に売渡した小麦粉、短麺の総量、その取引の期間と、被告人奥元が朝日新聞社又は自己のため被告人山本から買受けた小麦粉短麺の総量その取引期間とについての原判決の認定が一致していることは、所論もこれを認めているとおりであるから、原判決は右被告人両名間に現実に行われた同一の一連の取引を各被告人夫々の立場より観察して認定したもので何等所論のような違法はなく論旨は理由がない。

同第九点について。

原判決の事実摘示と、その挙示の証拠とを対照して見れば被告人は判示期間内に前後五回に亘り判示の如き大量の小麦粉及び短麺を統制額を著しく超過した価格で販売したのであるから、原判決は被告人は営利の目的で右取引をした事実を判示した趣旨であること疑を容れない。されば原判決には所論の如き違法はない。論旨は理由がない。

被告人山本太一の弁護人杉浦酉太郎、同三木今二上告趣意第一点について。

原判決が被告人を懲役二年及び罰金八〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは金八〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する旨の言渡をしたことは原判決に徴し明らかである。そして金八〇〇円を一日に換算する割合で右罰金八〇万円不完納の場合における労役場留置期間を計算すれば一〇〇〇日となり二年を超過することは所論のとおりである。してみれば原判決は、労役場留置の期間は二年を超えることはできない旨規定した刑法第一八条第一項に違反したもので論旨は理由がある。

同第二点について。

証拠調の請求については、これを却下するとき、及び新期日の指定その他別段の手続を必要とするときに限り決定を必要とし、その他の場合は決定をすることなく直ちに証拠調を実施すれば足りることは旧刑訴法第三四四条の規定に徴し明白である。そして公判廷において、弁護人から被告人の利益のため提出された書証の如きは、直ちに証拠調ができるもので新期日を指定する必要もなく又証拠調をするため別段の手続を必要とするものでもない。しかも原審第四回公判調書によれば、被告人の弁護人杉浦酉太郎が被告人の利益のため所論書証を提出したのに対し裁判長はこれが取調を為した上検事に示し、本件記録に編綴する旨告げたとの記載が存するから原審は所論書証については直ちに証拠調をしているのである〔公判廷で被告人の利益のため提出された書証は裁判所及び検察官が之を閲覧しさえすればその証拠調の手続は履践されたものであって必ずしもこれを被告人に示しその被告人の意見弁解を聴く必要のないことは判例である。(昭和二四年(れ)第一四三五号同二六年三月一五日第一小法廷判決)〕から所論の違法なく論旨は理由がない。

同第三点について。

統制額を超えて物品を売渡した所為を物価統制令第三条違反の罪に問擬するには、被告人が当該物品を統制額を超えて他人に売渡した事実を確定すれば足り、その他人が自己の為買受けたものであるか又は第三者の従業員としてその第三者の業務として買受けたものであるかということは、売渡人たる被告人に対する犯罪の成否に関係のないことであるから、原判決が被告人に対する犯罪としては、本件小麦粉短麺を相被告人奥元敏治に売渡した事実を認定しながら相被告人奥元敏治に対する犯罪としては右物品を被告人山本から一部は右奥元が朝日新聞社の従業員として同社の業務として買受け、他の一部は右奥元個人において買受けた事実を認定したからといって、直ちに原判決には理由齟齬又は審理不尽の違法があるとはいえない。論旨は理由がない。

同第四点について。

原判決は被告人山本の本件取引が所論会社の取引ではなく被告人山本個人のものであると認定したものでありその認定は原判決挙示の証拠により十分可能であることは弁護人中村登音夫の上告趣旨第一点において説明したとおりである。所論は原審裁判所の自由になし得る証拠価値の判断並に証拠の取捨選択を非難するに帰し上告適法の理由とならない。

同第五点について。

所論は要するに原判決の量刑を不当であるとするもので上告適法な理由とならない。

被告人奥元敏治の弁護人十川寛之助、同樺島益生、同重松忠雄の上告趣意第一点について。

原判決は、被告人奥元敏治に対し、罰金五万円に処し右罰金を完納することができないときは金三〇〇円を一日に換算して同被告人を労役場に留置する旨言渡したので同被告人が罰金を完納しない場合は、一六六日間留置してもなお二〇〇円の残りが生じ一日に満たない金額を生ずることは所論のとおりである。さればといって、原判決は罰金を完納することができない場合における労役場留置の期間を定めないものとはいえないから原判決が刑法第一八条第四項に違反したものとはいえない。論旨は理由がない。

同第二点について。

所論は、被告人山本太一の弁護人中村登音夫の上告趣意第八点と全く同一であるからこれに対する判断は同点について説明したとおりである。

同第三点について。

原判決判示第三の(一)の(ロ)の事実摘示を、これを認定する資料としたその挙示の証拠と照らし合せて見れば右摘示事項のうち何れの取引が被告人奥元の単独の犯行であり何れの取引が落合修との共犯であるかを知ることができるから、原判決には、所論のような違法はない、論旨は理由がない。

同第四点について。

原判決摘示の事実とその挙示の証拠とを彼我対照するときはその何れの証拠により何れの摘示事実を認定したかを知るに十分であって、原判決には所論のような違法はない。論旨は理由がない。

同第五点について。

原判決が判示第三の事実の冒頭において被告人奥元は各犯意を継続してと判示したのはその(一)の物価統制令違反の各所為が一個の継続した犯意による連続犯であり、その(二)の食糧管理法違反の各所為が他の一個の継続した犯意に出でた連続犯であるとしたものであることは原判文自体に徴し明らかであるから、原判決には所論のような違法はない。論旨は理由がない。

同第六点について。

原審第一回公判調書には被告人奥元の供述として所論のような記載の存することはそのとおりであるが、同調書を通覧すれば同被告人は、原判決判示第三の(一)の(イ)の摘示事実に符合する供述をしているのであって、所論の供述は、右(イ)の取引をするに至った経緯を述べたにすぎないことが明らかである。従って原判決は同被告人の供述の趣旨を変更して罪証に供した違法はなく、論旨は理由がない。

同第七点について。

原判決は判示第三の事実を被告人奥元敏治の原審公判廷における右判示事実と同旨の供述とこの自白を補強するための挙示の他の各証拠とを綜合して認定したものである。そして所論第一審第一回公判調書によれば被告人山本は、判示数量の小麦粉及び短麺を判示期間内に五回に亘り被告人奥元に売渡した旨供述して居り、一方被告人奥元に対する犯罪事実としては、同一数量の右小麦粉、短麺を、右同一期間内に七回に亘り被告人山本から買受けた旨認定していることは所論のとおりであるが、右回数の不一致の生じた所以は被告人山本の弁護人中村登音夫の上告趣意第八点について説明したとおりで何れも右被告人両名間に現実に行われた一連の取引を指称するものであり、何等両者に矛盾のないものであるから原判決が右公判調書の供述記載を判示に合う供述記載と表示したからといって少しも差支なく又供述の趣旨を変更して罪証に供した違法もない。又右公判調書によれば被告人山本は、所論五回の取引の品物の引渡しは何れも同被告人方工場でした旨の供述記載があり(記録第二二九丁末行以下)右被告人方工場とは判示富田製粉株式会社の工場であることは右公判調書の同被告人の供述記載の全趣旨に徴し明らかである。又右公判調書によれば第一審相被告人山田啓太郎は、被告人奥元から、小麦粉一五〇袋と短麺一〇〇袋を買受けたがその日は、六月七日頃だと思う旨供述しているので所論はその前提を欠き原判決には何等所論のような違法はない。論旨は理由がない。

同第八点について。

原審第二回公判調書の原審被告人松下義夫の供述記載全体を見れば同被告人は、前後四回に亘り何れも被告人奥元の依頼を承諾して、同被告人の判示第三の(二)の(イ)の所為を幇助した趣旨の供述していること明らかであるからこの点の所論は前提を欠くものであり何等所論のような違法はなく又、右公判調書によれば原審相被告人岡田秀夫は、原判決判示第三の(二)の(ロ)に符合する供述をしているのであるから、原判決が原審公判廷における被告人松下義夫、同岡田秀夫の夫々(二)の(イ)(ロ)に合う供述と説示した趣旨は、被告人松下については(二)の(イ)に、同岡田については(二)の(ロ)に夫々符合する供述を罪証に供した趣旨であること論を俟たない。よって論旨は理由がない。

同第九点について。

所論の理由ないことは被告人山本太一の弁護人中村登音夫の上告趣意第三点について説明したとおりである。

同第一〇点について。

原判決が判示第三の事実を被告人奥元敏治の原審公判廷の判示同旨の供述と共に、所論「買入明細一覧表及び小麦粉短麺販売一覧表の各記載」並に「落合修の所論始末書の記載」その他を綜合して之を認める旨説示していることは所論のとおりである。しかし、原審第一回公判調書によれば同被告人は原審公判廷で裁判長から所論各一覧表を示されて、その通り買入販売したことは相違ないと述べているのであり(記録第四五一丁)本件記録に存する右各表には、原判示第三の(一)の事実に符合する小麦粉短麺の買入、販売の事実が記載されているのであるから原判決は所論各一覧表の記載と相俟って、被告人奥元敏治がした原審公判廷の原判示第三の(一)の事実と同旨の供述により右事実を認定した趣旨であり、又本件記録に存する所論始末書には落合修が被告人奥元と共謀して、原判示第三の(一)の(ロ)の共犯に係る買受行為をした旨の記載があり、他にこれと矛盾する事実の記載は存しないのであるから、原判決が証拠として右始末書の記載と表示したのは、右始末書の、右判示(ロ)の事実と符合する記載全体によりこれを同被告人の右判示と同旨の原審公判廷の供述と綜合して右判示事実を認定した趣旨であること明らかであるから、原判決には、所論のような違法はない。論旨は理由がない。

以上、被告人奥元敏治に関する論旨はすべて採用することができず同被告人の上告は理由がないから旧刑訴法第四四六条に則りこれを棄却し、被告人山本太一に関する論旨のうち弁護人杉浦酉太郎、同三木今二の上告趣意第一点の理由あることは前記のとおりであるから旧刑訴法第四四七条に従って原判決中被告人山本太一に関する部分を破棄し、同法第四四八条により更に判決すべきものである。そこで原判決の確定した被告人山本太一に対する事実を法律に照らすと、同被告人の小麦粉販売の点は、物価統制令第三条、第四条、第三三条、昭和二一年一一月二〇日物価庁告示第一八五号(昭和二二年七月以降の分については同年七月六日物価庁告示第三五八号)に、短麺販売の点は、物価統制令第三条、第四条、第三三条、昭和二一年三月二二日大蔵省告示第一三二号(昭和二二年七月六日以降の分については同年七月六日物価庁告示第三五九号)に夫々該当するものであるが右は犯意継続に係るので、昭和二二年法律第一二四号附則第四項、改正前の刑法第五五条に則り連続一罪とし処断すべく情状により物価統制令第三六条によって懲役刑と罰金刑とを併科するのを相当と認め、所定刑期及び罰金額の範囲内で同被告人を懲役二年及び罰金八〇万円に処し、同被告人が右罰金を完納することができないときは、刑法第一八条に従い、金二〇〇〇円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置することとする、尚原審における訴訟費用中証人森康吉、同渡辺清八に支給した分は旧刑訴法第二三七条第一項によって同被告人に負担させることとする。

仍って主文のとおり判決する。

本裁判は裁判官全員一致の意見によるものである。

(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上 登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)

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